■添削前
謎の屁パワー
先日友人とドライブしていたら、道路脇に奇妙なものを見つけた(1)。
それはひろがる田んぼ(2)を背に十本ほど立てられた旗で、目の醒めるようなレモンイエローをしていた。
しかし周囲の景色にまったくそぐわない奇抜な色の旗が立っていたからといって、奇妙とは言わない。問題はそこに書かれていた文字だ。
「尻パワー!?」
私は思わず声に出してそれを読んだ。すると(3)すかさず友人が、「違うよ、屁パワーだよ」
屁パワー!? それって何!?
私たちは疑問に思いながらもそのままそこを通り過ぎ、車内はしばらくその話で盛り上がった。(4)
友人は「最近の農業学会(そんなもんほんとにあるのか?)で人間の屁の中に作物の成長を促す物質が発見され、屁の力で稲を育てようという運動に違いない」と真顔で言い、私は「屁だったら環境にもよさそうだよね」と笑顔で応えた。
友人と別れ(5)、家に帰った私は、早速先程(6)遭遇した奇妙な旗のことを家族に話した。母は爆笑し、父は新しい肥料の発見に感心していた。
その時だった。脇でコーヒーを飲んでいた弟が「それってさあ、民パワーじゃないの? 市長選の」
へ、市長選?
「そうだ、民パワーだよ、〇×民子のだよ」
いつになく大きな声で父は言い、自分のコーヒーを持つとそそくさと自室へ退散した。(7)
強風で読みづらかったとはいえ、民を尻と読み間違えた私、そしてそれを自信をもって屁と訂正した友人って……。
類は友を呼ぶという諺が、絶句する私の脳裏を冷笑を浮かべながら通り過ぎていった。
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■添削後
謎の屁パワー
先日友人とドライブしていたら、奇妙なものが目に飛び込んできた。
それは青々とひろがる田んぼを背に十本ほど立てられた旗で、目の醒めるようなレモンイエローをしていた。
しかし周囲の景色にまったくそぐわない奇抜な色の旗が立っていたからといって、奇妙とは言わない。問題はそこに書かれていた文字だ。
「尻パワー!?」
私は思わず声に出してそれを読んだ。すかさず友人が、「違うよ、屁パワーだよ」
屁パワー!? それって何!?
友人は「最近の農業学会(そんなもんほんとにあるのか?)で人間の屁の中に作物の成長を促す物質が発見され、屁の力で稲を育てようという運動に違いない」と真顔で言い、私は「屁だったら環境にもよさそうだよね」と笑顔で応えた。
家に帰った私は、早速先ほど遭遇した旗のことを家族に話した。母は爆笑し、父は新しい肥料の発見に感心していた。
その時だった。脇でコーヒーを飲んでいた弟が「それってさあ、民パワーじゃないの?市長選の」
へ、市長選?
……。
強風で読みづらかったとはいえ、民を尻と読み間違えた私、そしてそれを自信をもって屁と訂正した友人って……。類は友を呼ぶということわざが、絶句する私の脳裏を冷笑を浮かべながら通り過ぎていった。
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