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吾輩は王様である

与謝野鉄観音

吾輩たち猫にとっては、何もない広い場所よりむしろ、身を隠す物陰がたくさんあり、高低差がある狭い場所のほうが快適だ。そういう意味で、吾輩の住んでいるこの部屋は、とても居心地がいい。

吾輩のご主人は、モノを集めるのが好きらしい。特に本やCDなど、かさばるモノをどんどん買ってくる。そのうえ、なかなか捨てない。整理整頓が得意ならば問題ないのだろうが、うちのご主人様には、まったくもってその才がないらしい。何しろ、気に入ったものをどんどん部屋にぶちまけて、そのなかに埋もれて暮らすのが幸せらしいのだ。部屋にモノが溢れているくせに、肝心の本棚やCDラックには隙間がある。そこになぜかコップがしまってあったり、安っぽいお菓子のおまけが置いてあったりするのだ…。どうしてそんなことをするのか、吾輩は理解に苦しむ。

そんな部屋だが、吾輩にとってはすてきな迷宮だ。猫族の祖先がすんでいたジャングルも、きっとこんな感じだったのだろう。野生の血が騒ぐ。何しろ、まっすぐ歩こうと思っても、目の前に立ちはだかるのは障害物だ。それを踏み越えて行っていいものか、どう回り込んで先に進もうか、考えなければならない。ちょっとした探検気分だ。探検に疲れたら本に寄りかかって休み、眠くなったら取り込んだまま放ったらかしになっている洗濯物の中で眠る。高いところから世界を見下ろしたくなったら、本を踏み台にして本棚に上り、そこからカーテンレールの上に行くこともできる。下を見下ろすと、点在するたくさんのモノたちが小さな島々のように見える。世界の王になったような気持ちだ。空も飛べるような気がする…。

そんな気分の時は、カーテンレールの上から飛び降りることにしている。手足を広げてスカイダイビングだ。柔らかい場所に着地成功。と思ったとたん、眠っているご主人様が「うっ」とうめき、吾輩を腹部(そこ)から追い払う。…そして吾輩は、現実に戻る。

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