この作者がベストセラー狙いであったことは間違いない。
なぜなら昨今、話題になった海外ドラマや映画、「ブリジッド・ジョーンズの日記」「アリー my ラブ」「Sex and the City」などを研究し、なぜこの手の物語が人気になったのか、共通している部分はなにか、どんな人が支持しているのかを分析した結果をこの本の土台としているからだ。キーとなる部分をうまく活かすことができれば、これらの物語に共感を覚えた人々を、今度はこの本にどっと引き入れることが可能になる。
どんな人々が、どんな部分に共感を持っているのかを見極めるのは、この作者自身がその共感者衆の一人であったのだからそう難しくはなかったはずだ。
書く内容を十分に確定した上で彼女がとった戦略は、「勝ち/負け」という言葉を用いて、単純に女性を2分化して説明してみせる、というものであった。
言わずもがな、「勝ち/負け」という言葉は、現代の日本の社会において、「敏感語」すなわち、人々が敏感に反応する言葉の一つである。 この言葉を使うことによって、「共感者」だけでなく「上記のドラマなんて興味がなかった人」をも引き入れることに成功している。
書き方はあくまでもさりげなさを装っている。あたかも自分の言葉で自分の考えを述べているようだ。
この書き方も上記の海外ドラマ/映画のやり方を踏襲している。物語の進行が、主人公の「ひとりごと」や「日記」など、つまり建前でなく本音の部分を中心に進められていて、そこに共通点の一つがあるのだ。
「述べているようだ」と言わせてもらったのは、完全に自分をさらけ出しているようには思えないコメントが多数あるからだ。自分を正当化、もしくは美化して、しかもそれらを読者に気づかれないようにインプットしたい、という思惑が随所に見え隠れしている。
この本が多くの人に読まれた理由は、「目のつけどころ」「たまたま自分にあてはまった部分が多く書きやすかった」「敏感語を使用した」ということにつきると思う。
内容に関する賛否など、この作者にとってはどうでもいいことなのだ。
既に彼女の中では、「答えは得ている」のだから。
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