生きている限り「勝負」の機会は何度となく訪れる。
知力や体力、技術力を最大限に生かして競い、そして誰かが勝ち誰かが負ける。
勝利したときのあの感動や達成感をもう一度得たいため、敗北したときの屈辱感や悔しさを二度と味わいたくないため、人は更に努力して次の勝負に挑む。しかしそのためには、「どのように勝ったか/どのように負けたか」が重要であろう。
物語はアメリカがその強さを誇る世界最大のヨットレース「アメリカズカップ」を舞台に、主人公がその栄誉あるクルーに選ばれるところから始まる。
連勝を続けていたアメリカは、一人の凡ミスから優勝カップをオーストラリアに奪われる。アメリカの強さを世界に見せ付けるためのレースが、一転してその屈辱をさらけ出すレースとなった。全国から選ばれ、厳しい訓練を重ねてきたクルーにとっても、「納得のいかない負け方」だった。
彼らは自分たちの手で資金を集め、ヨットを作り、オーストラリアへ優勝カップを奪回しに行く。アメリカのプライドのためではなく、自分たちのプライドのために。納得のいく「勝ち方」あるいは「負け方」をするために……。
<ある女性の存在>
この女性がいなかったらただの「スポ根映画」になってしまうだろう。
凛とした思考回路を持ち海洋スポーツに長けている彼女は、精神的、技術的に主人公を支える。
女性の方には、彼女の言動や知性、人間性に着目しながらこの映画を楽しんでいただきたい。
<ウインズ(Winds:風)というタイトル>
ヨットは風を受けて走る。風は気まぐれに吹く。
ヨットレースとは、それぞれのヨットが、「いかに自分の風を獲得できたか」で勝敗が決まる。
斜めに傾きながら疾走するヨット、その回りに湧き上がる激しい波しぶき、風にはらむ大きく高い帆、真っ黒に日焼けした筋肉質のクルー。ダイナミックな映像は、太陽の温度や波しぶきの感触、潮の香りまでも伝えてくれる。
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