映画のラストシーン。かわいい小学生たちがノリノリでハードロックを演奏している。ボーカルは大の大人、それも小太りのうえに小学校の制服という冴えない姿。どう考えてもミスマッチだ。他の観客は大笑いするこのシーンで、私は涙が止まらなかった。
舞台はアメリカの名門小学校。そこに、売れない時代遅れのロッカーが金目当てで代用教員として潜り込むことから物語は始まる。バンド大会に出場するために、子どもを騙してバンドを組もうというのだ。やがて教室で密かにロックの練習が始まる……。
小学生たちには勉強以外にも、音楽やデザインやコンピューター、経営にいたるまで、さまざまなすばらしい才能が隠されていた。そこに主人公は目をつける。もちろんバンドに役立てようというよこしまな考えからだ。しかし、皮肉にも彼は、小学生たちを利用することを通して、彼らの秘められた可能性を伸ばす手伝いをすることになる。私はここに大きく心を揺さぶられた。子どもたちに大切なのは、ただ勉強ができることではなく、自ら自分の可能性に気づき、考え、伸びていくことだと思うからだ。
さらに、ダメ人間だった主人公も大きく変化する。考えなしで自分勝手だった彼が、子どもたちを対等なバンド仲間と認めたときから、どうやったら腕をあげさせられるか、やる気を持たせられるか、自信をなくした子どもに勇気を与えることができるか、を一生懸命考え、行動し始める。子どもたちへの愛情に目覚めた彼は、他人への思いやり、何かをやり遂げることの素晴らしさをも実感していく。
よくできたコメディだから思い切り笑わせてくれる。同時に、観る者の心を温かい気持ちで満たしてくれる、そんな映画だ。
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